再会のとき





 まさに猪突猛進の勢いだった。




「あ、法章っ!」




 言うが早いか、ファウナはその少年に向かって一直線に突っ込んでいった。

 止める暇も有らばこそ。

 さすがに柳のような少年に向けて全身全霊を込めたタックルをかます真似はしないだろうと分かってはいたが、その場に居たほぼ全員が一様に動きを止めた。



 そんなことなど全くお構いなしに、ファウナは懐かしい相手にさながら動物のように擦り寄っていた。苦笑しながら彼女を見下ろす法章に、真っ先にフローラが声をかけた。



「ちょっ、法章、大丈夫? 骨とか折れてない!?」
「いやそれは言いすぎだろフローラ…………」



 以前、同様に再会の洗礼を既に受けていた真砂が、こころなし顔を引き攣らせて呟いた。





 実に十年ぶりだった。

 それぞれで連絡を取り合い会うこともなくはなかったが、こうして研究所の仲間がここに全員揃ったのはあの時別れて以来になる。それを考えれば感慨も一入だ。ファウナの行動も決して大げさでないと言えるかもしれない。

 しかし。




「……いーかげん離れなさいファウナ」




 フローラがその銀髪に手をやりながら妹を諭す。
 だがファウナはひしと法衣を掴んで離さない。どうしたものかと呆れ、苦笑する面々に、しがみつかれている当の本人が、こちらも苦笑混じりに言った。




「構いませんよ。会うのも、久しぶりのことですから」
「まあ、法章がそう言うのなら、私は構わないんだけど」



 ひたすら柔和な雰囲気を崩さず、法章は微笑んだ。



「まあ法章も男だしねー、女の子にしがみつかれるのも悪くないでしょうよ」
「いやそういう問題じゃないでしょ、ネイ」



 相変わらず日本酒の一升瓶を手にしたネイがからかうように言うと、再びフローラが頭を抱えた。
 どう見てもそういう風情は、ない。



「まあ、犬か猫と言ったところだな」
「白ぅ…………あんたまで」



 ひどく素っ気ない物言いだったが、持ち上げた口の端に感情が表れていた。白のその表情を見て取ったフローラが溜息をつく。




「ほらほら、積もる話は歩きながらでも出来るでしょ。ファウナ、そのままでいいから大人しくしてなさいよー」
「はぁい」



 ネイの許可を得たファウナは一層、法章の法衣を固く握りしめた。



「まったくもう」



 言いながら、フローラの顔には笑みが浮かんでいる。


 横たわる時の流れなど無いもののように、しかし確実に成長した彼らは再びここで一堂に会した。




 再録。そしてちょっと修正。
 某所での発言に釣られて書いてみました、ファウナ×法章。そして見事惨敗。
 一応桂もいますが、発言がないので存在感が……あ、由姫もいます。


 030423/030707